蓼科高原にある世界で唯一のマリー・ローランサン美術館の順路の最初にアポリネールの詩「ミラボー橋」(シャンソンの「ミラボー橋」と同じ)がある。それがアポリネールのローランサンへの思いの詩だというのを初めて知った。
順路の最後にあるのは(多分、最後だったと思う)、ローランサンの詩「鎮静剤」。その詩の中で、ローランサンはアポリネールに忘れられた哀れな女だとうたっている。スペイン風邪で死んだアポリネールはローランサンのことを死ぬまで思い続け、ローランサンが亡くなった時、彼女の遺言通り、アポリネールの手紙を抱いて埋葬されたんだって。
自転車をルーフに積んだ夏休み気分の車達(写真上)、輪行サイクリングがしたい。
写真Pentax K-m White with DA21mm
ミラボー橋(ギョーム・アポリネール)堀口大學 訳
ミラボー橋の下をセーヌ川が流れ
われらの恋が流れる
わたしは思い出す
悩みのあとには楽しみが来ると
日も暮れよ
鐘も鳴れ
月日は流れ
わたしは残る
手と手をつなぎ
顔と顔を向け合おう
こうしていると
二人の腕の橋の下を
疲れたまなざしの無窮の時が流れる
日も暮れよ
鐘も鳴れ
月日は流れ
わたしは残る
流れる水のように恋もまた死んでゆく
恋もまた死んでゆく
命ばかりが長く 希望ばかりが大きい
日も暮れよ
鐘も鳴れ
月日は流れ
わたしは残る
日が去り
月がゆき
過ぎた時も
昔の恋も
二度とまた帰ってこない ミラボー橋の下を
セーヌ川が流れる
日も暮れよ
鐘も鳴れ
月日は流れ
わたしは残る
鎮静剤(マリー・ローランサン)堀口大學 訳退屈な女より
もっと哀れなのは
悲しい女です。悲しい女より
もっと哀れなのは
不幸な女です。不幸な女より
もっと哀れなのは
病気の女です。病気の女より
もっと哀れなのは
捨てられた女です。捨てられた女より
もっと哀れなのは
よるべない女です。よるべない女より
もっと哀れなのは
追われた女です。追われた女より
もっと哀れなのは
死んだ女です。死んだ女より
もっと哀れなのは
忘れられた女です。
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